M&A(Mergers and Acquisitions)は、企業の合併や買収を通じて事業拡大や経営再編を図る手法として、近年ますます注目を集めています。少子高齢化や事業承継問題の深刻化、新型コロナウイルスの影響下でも進む経済活動のグローバル化によって、今後もM&Aの需要は高まり続けると予想されています。そのため「M&A業界で活躍したい」「未経験からでも挑戦可能なのか」という問いを持つ方も増えているのではないでしょうか。
本記事では、M&A業界の全体像、具体的な仕事内容、転職に必要なスキル、未経験からチャレンジする際の難易度やキャリアパスなどを徹底解説していきます。M&A業界に興味を持っている方が、自らのキャリアを次のステージへ進めるための第一歩として、ぜひ最後までご覧ください。
- M&A業界とは?成長背景と将来性
- M&A業界の主な職種と仕事内容
- M&A業界で求められるスキル・経験
- M&A業界への転職難易度と未経験からのルート
- M&A業界でのキャリアパスと年収イメージ
- M&A業界に向いている人の特徴とは?
- 【まとめ】M&A業界に挑戦するための第一歩を踏み出そう
- 今すぐチェック → M&A業界に強い転職エージェントまとめ(内部リンク)
- 【追加解説1】M&A業界を取り巻く主要プレイヤーと組織形態
- 【追加解説2】M&Aの主なプロセスと具体的なステップ
- 【追加解説3】M&Aの専門用語や資格について
- 【追加解説4】未経験からの成功事例とキャリア形成のポイント
- 【追加解説5】M&Aアドバイザリーでのキャリアアップ後の選択肢
- 【追加解説6】M&A業界の最新動向と今後の課題
- 【追加解説7】より具体的な学習方法・リソース紹介
- 【追加解説8】実際の転職面接で聞かれやすい質問例
- 【追加解説9】転職後のオンボーディングとスキルアップ
- 【追加解説10】グローバルM&A案件での注意点と魅力
- 今すぐ行動を起こそう!
M&A業界とは?成長背景と将来性
M&Aの基礎概念
M&A(Mergers and Acquisitions)とは、企業の合併(Merger)や買収(Acquisition)を指す用語です。企業同士が統合することで、シナジー効果を狙ったり、市場シェア拡大や新規事業領域への参入を加速させたりすることが目的となります。また日本の場合は、中小企業の後継者不足が深刻化していることもM&Aが増加する背景のひとつです。
M&A業界の成長背景
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事業承継問題の顕在化
日本では中小企業の経営者の高齢化が進んでおり、事業承継が大きな課題となっています。後継者不在の場合、黒字でも廃業を検討せざるを得ないケースが増えています。そうした企業の存続や発展を目的にM&Aを活用する動きが強まっています。 -
グローバル競争の激化
国内市場の伸びが鈍化するなか、グローバルでの競争が激しくなっています。他国企業との提携や買収を通じて、一気に海外マーケットへ参入する戦略を取る企業が増えている点も、M&Aのニーズを後押ししています。 -
投資ファンドやPEファンドの台頭
ビジネス再編や企業再生を主な目的とするファンドが活発に動いており、ファンドの出口戦略としてM&Aは欠かせない手段となっています。投資ファンド主導によるM&Aが増えることも、M&A業界におけるビジネスチャンス拡大の一因です。 -
新型コロナウイルスの影響
新型コロナによる経営環境の変化や不確実性が高まったことで、企業が将来のリスクを回避・分散するためにM&Aを活用する例も増加。アフターコロナの新たなビジネスモデル構築に向けて、異業種への参入や共同事業化といったM&A案件が注目を集めています。
将来性と市場規模の展望
M&A業界は、今後も国内外の経済・社会情勢に応じて変化しながら成長を続けると見込まれています。特に事業承継ニーズは急速に高まり続けることが予想され、大手から中小まで幅広い案件の増加が期待されます。今後5年~10年程度は、国内M&A案件数の増加傾向が維持されるとの見方が主流です。
また、外資の投資ファンドが日本国内の企業に積極的にアプローチする動きもあり、国際的なM&A案件のコンサルティングやアドバイザリーの需要も拡大するでしょう。こうした背景から、M&A業界で働く人材の需要は底堅く、「長期的なキャリアを形成しやすい魅力的な業界」といえます。
M&A業界の主な職種と仕事内容
M&A業界と一口にいっても、その業務内容は多岐にわたります。業界を大きく捉えると、以下のような職種や部署が存在し、それぞれが連携しながらM&A案件を成功へ導く流れになります。
M&Aアドバイザー(FA)
まずM&A業界の中心的存在として挙げられるのが、**M&Aアドバイザー(FA:Financial Advisor)**です。
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役割: 売り手企業・買い手企業のそれぞれの立場に立ち、M&Aの戦略策定や交渉、契約条件の調整などを行います。多くの場合、売り手側か買い手側のどちらかのアドバイザーとして契約するケースがほとんどです。
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具体的業務:
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企業価値の算定(バリュエーション)
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売り手企業・買い手企業との交渉サポート
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契約書や各種資料の準備・チェック
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デューデリジェンス(DD)サポート
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スケジュール管理・プロジェクトマネジメント
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M&Aアドバイザーは、銀行や証券会社などの金融機関系出身者、会計士など財務系のバックグラウンドを持つ人が活躍することが多いですが、近年は異業種出身のコンサルタントなども増えています。
コンサルティング・アドバイザリー
M&Aコンサルティングと呼ばれる領域は、より戦略的・包括的な支援を行うのが特徴です。
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戦略コンサル型: 経営戦略や事業戦略の立案の一環としてM&Aを位置づけ、クライアント企業がどのような相手と組むべきか、どのタイミングで案件を進めるべきかといった上流工程からアドバイスを行います。
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専門アドバイザリー型: M&Aの各フェーズに特化し、事業デューデリジェンス(ビジネス面での精査)や財務デューデリジェンスの一部、PMI(Post Merger Integration)など、特定の領域における専門的なコンサルティングを提供します。
M&Aアドバイザーとの違いは、より経営戦略に踏み込んだ支援をすることが多い点です。ビッグフォー系のコンサルティングファームや大手戦略コンサルティングファームが、この分野で大きなシェアを持っています。
バックオフィス(デューデリジェンス/PMI)
M&Aが実行される際には、企業の財務状況、法的リスク、経営状態などを細かく調査・分析する**デューデリジェンス(DD)が必要です。また、買収後の統合作業を円滑に進めるPMI(Post Merger Integration)**も重要なプロセスです。このバックオフィス的役割を担う専門家や部署も、M&A業界の欠かせない存在といえます。
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デューデリジェンス(DD)担当: 会計・財務・税務・法務など複数の分野にまたがって詳細な調査を実施し、企業価値やリスク要因を洗い出します。
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PMI担当: M&Aが成立した後、組織統合やシステム統合、人事制度の統一など、買収後のスムーズな経営運営を支援する役割です。特に海外企業のM&Aでは文化の違いへの対応なども含め、より高度なマネジメント力が求められます。
法務・財務・会計系の専門職
M&Aには複雑な法務手続きや財務分析が不可欠となるため、弁護士や会計士、税理士などの専門家が案件に深く関わります。
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弁護士: 契約書作成・レビュー、コンプライアンスチェック、訴訟リスク評価など。
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会計士・税理士: 財務諸表の監査、税務リスクの評価、バリュエーション、税務ストラクチャリングの提案など。
法律事務所や会計事務所、あるいはコンサルティングファームなどでのチーム体制で案件にあたることが多く、これらの専門家なしにM&Aを成立させることは極めて困難です。
M&A業界で求められるスキル・経験
M&A業界では、案件の規模や複雑性によって必要となるスキル・経験の幅も広くなります。以下に代表的なスキルや知識をまとめますが、すべてを完璧にこなすことは難しいため、「自分がどのポジションで、どのスキルを強みとして活かせるか」を整理することが重要です。
財務・会計知識(PL/BS/DCFなど)
M&Aは、企業価値を評価するところからスタートします。そのため、財務諸表(PL・BS・CF)の読み方や分析手法、そしてDCF(Discounted Cash Flow)などのバリュエーション手法に対する理解が欠かせません。
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企業価値評価の基礎: DCF、マルチプル法(PER、EV/EBITDAなど)、ネットアセット法
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財務分析: 損益計算書や貸借対照表を用いて、収益構造・コスト構造・資産負債の状況を正確に把握する能力
金融機関や会計系出身であれば、このあたりの知識を活かしてM&A業界へ転職しやすい一方、未経験者でも勉強や資格取得(簿記2級以上など)を通じて基礎知識を身につけることが可能です。
ロジカルシンキングと分析力
クライアントの課題やニーズを正確に理解し、最適なM&Aスキームを提案するためには、ロジカルシンキングが重要です。特にコンサル型のアドバイザリー業務では、
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問題の構造化
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論点の抽出
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データ分析・根拠に基づいた提案
といった一連のプロセスが求められます。案件が複雑になるほど、膨大な情報を整理し、ロジックを組み立てる力が成果を左右します。
コミュニケーション力(CxOとの折衝)
M&Aは企業の経営層や投資家同士の交渉が中心となるため、担当者はCEO・CFOをはじめとする役員クラスとのコミュニケーションが多くなります。専門用語や財務分析の結果を経営者にわかりやすく伝え、相手の経営戦略を理解しながら交渉をリードするには、高いコミュニケーション能力が欠かせません。
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プレゼンテーション力: 複雑な情報を簡潔にまとめ、要点を明確に伝える。
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ネゴシエーション力: 相手の立場を考慮しつつ、クライアントの利益を最大化する交渉戦略を立案・実行する。
調整力・プロジェクト管理能力
M&A案件は、弁護士や会計士、コンサルタント、ファンド担当者など、多種多様な専門家が参加する大規模なプロジェクトとなります。スムーズに手続きや調査を進めるためには、強い調整力とプロジェクト管理能力が必要です。
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スケジュール管理: タイトなスケジュールの中で各タスクを優先度付けし、関係者全員をリードする。
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リスク管理: 法務リスク、財務リスクなどを想定し、事前に対策を講じる。
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チームビルディング: 異なる専門性やバックグラウンドを持つメンバーをまとめ、プロジェクトの方向性を共有する。
M&A業界への転職難易度と未経験からのルート
転職難易度の現状
M&A業界は高収益・高年収が期待できるため、求人数に対して応募が多く、競争率が高めな傾向があります。特に大手証券会社のM&A部門や外資系投資銀行、総合系コンサルティングファームなどは採用基準が厳しく、高い英語力や会計・金融知識、戦略コンサル経験などが求められます。
一方で、事業承継ニーズの増加に伴い、地方のM&A仲介会社や独立系のFAファームなどは人材不足の状態が続いており、未経験や異業種出身でもポテンシャル採用を行うケースがあります。そのため、「M&Aの世界に飛び込みたい」という強い意欲があり、最低限の会計知識や金融知識が備わっている方であれば、道は開けます。
銀行・証券・会計系からのキャリアチェンジ
M&Aアドバイザーの多くは銀行や証券会社、監査法人出身です。特に以下の領域での経験は転職に有利となります。
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銀行の法人営業(事業承継やM&A案件に関わった経験があれば尚可)
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証券会社の投資銀行部門(IPOや増資、社債発行などの資金調達案件に関する知識が活かせる)
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監査法人・会計事務所の会計士(財務監査、企業評価など専門知識がそのまま強みになる)
これらの業種・職種出身者は、財務・会計リテラシーとプロジェクト管理経験を活かしてM&Aアドバイザーやコンサルタントへキャリアチェンジするパターンが多く見られます。
20代・30代で未経験から転職するための準備
金融・会計系の出身ではないけれど、20代・30代でM&A業界に飛び込みたい場合は、以下のステップを踏むとよいでしょう。
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財務・会計の基礎学習
・簿記2級や証券アナリスト(CMA)の基礎を独学で学ぶ
・M&Aに特化した書籍やオンライン講座で基礎知識を習得 -
ロジカルシンキングを鍛える
・ケース面接の対策本やコンサルティング向けのフレームワーク学習
・日常業務で課題整理や提案資料作成などの練習を意識的に行う -
関連資格や実績のアピール
・もし可能であれば、簿記1級やUSCPA、税理士科目合格など、高度な会計知識を示せる資格を取得
・現在の職場でM&Aに類する業務(提携案件や資本政策など)に関与するチャンスがあれば積極的に関わる -
転職エージェントなどプロのサポートを受ける
・M&A業界に特化した転職エージェントへ登録し、未経験でも可能な案件情報を収集
・企業側が求める具体的なスキルセットや業界動向について最新情報を得る
M&A業界に強い転職エージェントの活用法
未経験からM&A業界を目指す際に、転職エージェントを活用することは非常に有効な手段です。特に業界に強いエージェントであれば、以下のようなメリットが期待できます。
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業界の最新動向や募集背景の詳細を教えてもらえる
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未経験者歓迎またはポテンシャル採用を実施している企業を紹介してもらえる
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応募書類のブラッシュアップや面接対策のサポート
M&Aアドバイザリーファームは、求人票では「経験者優遇」としていても、実は未経験人材に門戸を開いている場合があります。面接対策のなかで、面接官の視点やM&Aアドバイザーに必要とされる素養を事前に教えてもらえるため、書類選考から面接を突破できる確率が上がるのです。
M&A業界でのキャリアパスと年収イメージ
M&A業界はハイリスク・ハイリターンの世界と言われることが多く、実力が付けば付くほど大きな報酬を得られる可能性があります。しかしながら、案件の成約見込みやマーケット状況に左右されることも多く、常にプレッシャーとの戦いが続く業界です。ここでは、一般的なキャリアステップと年収レンジについて解説します。
若手〜中堅での年収レンジ
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ジュニアアナリスト/アソシエイト(1~3年目):
年収500万円~800万円程度が一般的です。外資系や日系大手投資銀行の場合、ボーナスが多く支給されるため、上振れするケースもあります。 -
アソシエイト〜シニアアソシエイト(4~6年目):
年収800万円~1,200万円程度。案件をリードできるようになると、インセンティブやボーナスによって年収が大幅に上がる可能性があります。
パートナー・事業責任者レベルのキャリア
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VP/ディレクター(7~10年目以降):
年収1,200万円~2,000万円程度が目安。大手証券や外資投資銀行、PEファンドなどでは更に高額になる場合も珍しくありません。 -
パートナー/事業責任者クラス:
大手ファームや投資銀行でパートナーやExecutive Directorクラスになると、年収3,000万円を超えることも多々あります。成功報酬型の報酬システムを採用している場合、数億円レベルの報酬を獲得する事例もあり得ます。
ただし、こうした高年収の背景には、長時間労働や高いストレス、激しい競争があることを理解しておきましょう。
M&A業界に向いている人の特徴とは?
M&A業界は華やかなイメージがある一方で、裏では細かな分析や書類作業、タイトな交渉スケジュールを乗り越える忍耐力も必要です。以下のような特性を持つ方は、この業界で成功しやすいといえます。
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数字やデータ分析が好き
財務分析やバリュエーションといった数値を扱う業務が多いため、数字に強い人ほど活躍できる傾向があります。 -
コミュニケーション能力が高い
多種多様な関係者との調整が欠かせません。チーム内外でのコミュニケーションがスムーズにできる人が重宝されます。 -
ストレス耐性がある
成果が案件の成約の有無によって左右されるため、プレッシャーが大きくなりやすい仕事です。メンタル面のタフさが求められます。 -
学習意欲が高い
法務や税務、会計・金融など幅広い知識を常にアップデートする必要があります。好奇心と向上心を持って学習を続けられる人は成長が早いでしょう。 -
課題解決や交渉が好き
M&Aはゴールにたどり着くまでに多くの利害調整が必要です。問題解決型の思考を持ち、交渉プロセスを楽しめる人が向いています。
【まとめ】M&A業界に挑戦するための第一歩を踏み出そう
M&A業界は今後も需要が拡大することが見込まれ、未経験からでも十分に活躍が期待できる可能性がある分野です。ただし、競合も多く専門知識やスキルが求められるため、以下のポイントを意識して転職活動を進めましょう。
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財務・会計の基礎知識を身につける
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ロジカルシンキングやコミュニケーション力を磨く
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転職エージェントの活用で業界動向・面接対策を得る
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未経験でもポテンシャル採用がある企業を狙う
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自分がどのポジションで強みを発揮できるかを明確化する
日本経済や中小企業の行く末を左右する重大な場面に立ち会えること、そして成果次第で高収入を狙える魅力は非常に大きい業界です。少しでも興味を持たれた方は、まずは情報収集から始めてみましょう。
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FAQ
Q. M&A業界に未経験から入るのは難しい?
A. 簡単ではありませんが、以前より門戸が広がってきているのは事実です。特に地方のM&A仲介会社や独立系のファームではポテンシャル採用を行うケースがあり、金融知識や会計知識があれば採用されやすくなります。
Q. 必須の資格はありますか?
A. 絶対に必要な資格はありませんが、財務・会計リテラシーを証明するために簿記や会計士資格、USCPAなどを取得すると有利です。M&Aアドバイザー協会が認定する「M&Aシニアエキスパート」などの資格も存在しますが、必須ではありません。
Q. 激務って本当?
A. 一般的に激務とされる業界であることは間違いありません。案件の進行状況によっては深夜や週末の作業が続くこともあり、体力と精神力が試されます。一方で成果報酬やキャリアアップによる高収入が期待できるため、バランスをどう取るかが重要です。
Q. ファイナンスの知識はどの程度必要?
A. 企業価値算定(バリュエーション)や財務分析が中心となるポジションであれば、かなり深いファイナンス知識が必要です。バックオフィスやPMIなどのポジションの場合でも、最低限の会計知識は必須となります。最初は簿記や基礎的なファイナンス理論を学ぶだけでも、実務での理解がスムーズに進みます。
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「まずは情報収集から、理想のキャリアの第一歩を」
これまでの内容を踏まえつつ、未経験転職希望者、経験者、そして将来のキャリアパスを考える全ての方に役立つ追加トピックを詳説していきます。
【追加解説1】M&A業界を取り巻く主要プレイヤーと組織形態
1. 日系大手証券・メガバンク系M&A部門
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特徴: 大型案件や上場企業同士の統合案件を多く手掛ける。企業の財務戦略全般に携われるため、キャリアアップのための教育体制が充実している場合が多い。
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強み: 企業とのリレーション(取引実績)が豊富で、ブランド力も高い。複雑な金融スキームや総合金融サービスと連動して提案できる。
2. 外資系投資銀行(Goldman Sachs、Morgan Stanleyなど)
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特徴: 世界的なブランド力と高度な金融技術を活かして、グローバル案件や大型クロスボーダーM&Aを取り扱う。
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強み: 報酬水準が非常に高い一方、激務度合いもトップクラス。英語力は必須であり、国際的なキャリアを築きたい人向き。
3. 独立系M&Aアドバイザリーファーム(日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、RECOFなど)
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特徴: 中小企業の事業承継や中堅企業の買収案件を中心に手掛けるファームが多い。買い手・売り手双方のマッチングを専門に行う。
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強み: 地方企業にも積極的にアプローチするため、地域密着型の案件が多い。未経験者でも積極的に採用する企業もあり、営業力重視の社風も見られる。
4. 総合コンサルティングファーム(Big4系コンサル、戦略コンサルファーム)
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特徴: M&Aにおける戦略立案からPMIに至るまで、包括的なアドバイザリーを提供。財務面に強いBig4や戦略面に強い外資コンサル系など、それぞれ専門分野が異なる。
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強み: 経営課題全般をカバーする能力を培える。M&A以外のプロジェクトも経験できるため、幅広いコンサルスキルが身につく。
5. 事業会社内のM&A担当部署(事業開発部、経営企画部など)
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特徴: 事業会社の経営戦略としてM&Aを活用するケースが増えており、経営企画部門や事業開発部門でM&Aを主導するポジションが存在。
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強み: コンサル・アドバイザリーとは違い、自社の経営戦略に深くコミットできる。投資判断やPMIをじっくり行い、自社にとって最適なM&Aを追求できる。
【追加解説2】M&Aの主なプロセスと具体的なステップ
M&A案件は大きく**「検討・計画段階」→「交渉・デューデリジェンス段階」→「契約・クロージング段階」→「PMI段階」**の流れで進みます。それぞれにおいて必要なタスクや関係者が異なるため、プロジェクトマネジメントが非常に重要になります。
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検討・計画段階
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経営戦略の立案: どのような企業・事業を買収または売却すべきかを検討。
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アドバイザー選定: 金融機関やアドバイザリーファームを選定する。
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情報収集: 対象業界・企業のリサーチ、バリエーションの仮算定。
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交渉・デューデリジェンス段階
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NDA(秘密保持契約)締結: 機密情報のやり取りを保護するため。
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LOI(Letter of Intent)またはMOU(Memorandum of Understanding): 基本合意書を取り交わし、条件やスケジュールを大枠で確定。
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デューデリジェンス(DD): 財務・法務・税務・ビジネスなど専門家が詳細調査を実施。リスクや企業価値を確定する。
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価格・条件交渉: DDの結果を踏まえ、最終的な価格や契約条件を詰める。
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契約・クロージング段階
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最終契約(SPA:Sales and Purchase Agreement): 売買契約書を締結。
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クロージング: 実際の資金決済や株式譲渡、許認可手続きなどを完了し、M&Aが正式に成立。
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PMI段階
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組織統合・業務統合: 部門ごとの責任範囲や権限、組織体制の見直し。
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人事制度・企業文化統合: 人事評価や報酬体系、企業文化やバリューの共有。
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シナジー最大化: 買収目的を達成するための事業拡大、コスト削減、技術共有など。
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【追加解説3】M&Aの専門用語や資格について
主な専門用語
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バリュエーション(Valuation): 企業価値評価。DCFやマルチプルなどの手法を用いて企業の価値を算出。
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LOI(Letter of Intent)/MOU(Memorandum of Understanding): M&Aにおける基本合意書。交渉の大枠を確定させる文書。
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DD(Due Diligence): 売買対象企業の財務・法務・税務・ビジネス面の詳細調査。
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SPA(Sales and Purchase Agreement): 株式売買契約書。
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シナジー(Synergy): 企業統合によって生まれる相乗効果。売上拡大、コスト削減などが代表的。
関連資格
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簿記(日本商工会議所): 会計の基礎知識を証明する代表的な資格。2級以上を取得すると転職時にプラス材料となりやすい。
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公認会計士(CPA)/税理士: 財務・税務の専門家としてM&A案件で高く評価される。
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M&Aシニアエキスパート: 一般社団法人M&Aアドバイザー協会が認定する資格。M&A業務に必要な知識を体系的に学べる。
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USCPA(米国公認会計士): 国際的な会計基準への理解を証明でき、外資系ファームやクロスボーダーM&Aで強みになる。
【追加解説4】未経験からの成功事例とキャリア形成のポイント
未経験転職者のよくあるバックグラウンド
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営業経験者
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商談スキルやコミュニケーション力を活かし、M&A仲介会社でスモール~ミドル案件のクロージングに成功。
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財務知識は後から勉強してカバー。
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ITコンサルやシステムエンジニア
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デジタル領域の知見を活かして、IT企業同士のM&A案件やシステム統合(PMI)支援をメインに活躍。
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ロジカルシンキング力とプロジェクト管理能力を評価される。
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事業会社の経営企画出身者
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事業計画立案や経営管理の経験を活かし、M&Aコンサルファームに転職。
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財務・会計が得意であればバリエーションも学びやすい。
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成功につなげるためのポイント
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自分の強みとM&Aのどのフェーズが親和性があるかを認識する
例)コミュニケーション力が強みならアドバイザリーや営業寄り、分析や数値管理が強みならデューデリジェンスやファイナンス系など。 -
実務経験の代替となる資格や学習成果を積極的にアピール
例)簿記2級・証券アナリスト試験などの合格、オンラインコース受講修了など。 -
転職エージェントや同業界に知見のある人脈を活用し、業界情報をアップデート
例)業界動向や採用トレンド、面接での評価ポイントなどをリアルタイムで把握。 -
論理的思考とコミュニケーションを鍛える
例)ケーススタディへの取り組み、ビジネス文書や提案資料の作成練習など。
【追加解説5】M&Aアドバイザリーでのキャリアアップ後の選択肢
M&Aアドバイザリーで5~10年ほど経験を積むと、以下のようなキャリアパスが考えられます。
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外資系投資銀行やPEファンドへの転職
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大型案件に携わり、よりグローバルなキャリアを築ける。
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報酬面ではさらに高額となるケースが多いが、業務負荷も大きい。
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事業会社の経営企画やCFOポジション
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M&A経験を活かして、自社の成長戦略を支える立場に回る。
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経営の中枢で意思決定に関われるため、ワークライフバランスを考慮しながら長期的に働きやすい場合も。
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起業・独立
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個人でM&Aコンサルティングを行ったり、独立系のM&Aファームを立ち上げたりする道もあり。
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人脈や実務経験が豊富であれば、個人のブランディング次第で独立後も十分稼げる可能性がある。
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【追加解説6】M&A業界の最新動向と今後の課題
国内中小企業の事業承継ニーズは依然として高い
日本国内では経営者の高齢化と後継者不在の問題が深刻化しており、黒字企業でも後継者がいないために廃業するケースが増加しています。そのため、中小企業向けM&Aのニーズは今後10年は続く見込みです。「街の企業を守る」という社会的意義がある仕事として、やりがいを感じられる場面が多くなるでしょう。
クロスボーダーM&Aの増加
国内需要の伸び悩みから、海外企業の買収によって新市場を獲得したり、海外企業からの買収を受けたりするケースも増えています。グローバルM&Aでは、言語や文化、法規制の違いなどに対応する必要があるため、英語力や国際ビジネス知識が重宝されます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)領域のM&A
IT・テクノロジーの進化により、多くの企業が自社のDXを加速するためにスタートアップの買収やITベンダーとの提携を進めています。DX案件は今後さらに拡大する見込みであり、ITコンサルやシステム統合の知見がある人材は引き続き需要が高まるでしょう。
ワークライフバランスと人材流動性
M&A業界の激務ぶりが注目される一方で、各社とも人材確保のために働きやすい環境づくりを進めつつあります。リモートワークやフレックスタイムの導入、健康管理プログラムなどを整備する企業も増えています。また、業界全体で人材の流動性が高まっているため、経験者はもちろん未経験者にもチャンスが巡りやすい時代になりつつあります。
【追加解説7】より具体的な学習方法・リソース紹介
M&A業界への転職を目指す際、具体的にどのような学習をすればよいのかをまとめます。
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書籍
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「企業価値評価の教科書」(東洋経済新報社)
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「M&A実務のすべて」(中央経済社)
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「バリュエーション-企業価値を創造するストーリーづくり」(日本経済新聞出版社)
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オンライン講座・動画
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UdemyやYouTubeで「M&A」「バリュエーション」「ファイナンス基礎」などのキーワードで検索し、基礎から実務レベルまで学べるコースを受講。
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ビジネス系スクール(グロービス学び放題など)で経営戦略や会計基礎を学ぶのも有効。
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資格試験の活用
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簿記(2級以上): 最低限の財務会計知識を証明できる。
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証券外務員: 金融商品取引や関連法規を学ぶために、基礎として勉強する人も。
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中小企業診断士: 企業診断や経営戦略の知識が得られ、中小企業向けM&Aアドバイザーとして強みになりうる。
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セミナー・カンファレンス
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日本M&Aセンター、RECOFなどが主催する無料セミナーや講演会に参加して最新の事例を学ぶ。
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M&Aアドバイザー協会の研修プログラムを活用し、ネットワークを広げる。
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【追加解説8】実際の転職面接で聞かれやすい質問例
M&A業界への転職を目指す方が、面接でよく遭遇する質問とポイントをまとめます。
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「なぜM&A業界で働きたいのか?」
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志望動機とキャリアビジョンを明確に。
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「高収入だから」という理由だけでなく、M&Aの社会的意義や自身の強みを活かせる点を言及すると良い。
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「財務諸表の読み方を説明してもらえますか?」
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簿記2級程度の知識をベースに、BSとPLの基本構造、キャッシュフロー計算書の要点を簡潔に説明できるようにしておく。
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「当社が得意とする業界について理解していますか?」
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応募先企業の得意分野や過去の主なM&A案件を事前にリサーチし、具体的な案件事例を語れると印象が良い。
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「案件が途中で破談した場合、どのように対応しますか?」
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M&Aは破談になるケースもあるため、その際のリスク管理やクライアントへの対応策を考えておく。
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誠実さと粘り強いコミュニケーション姿勢をアピールできる。
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「英語力はどの程度ありますか?」(外資やクロスボーダー案件が多いファーム)
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TOEICや英検、海外留学経験などを提示し、ビジネスレベルでコミュニケーションが可能かどうかを具体的に伝える。
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【追加解説9】転職後のオンボーディングとスキルアップ
M&A業界に入社した後、短期間で戦力となるために意識すべきポイントです。
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担当案件を通じたOJT
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上司や先輩のプロジェクトにアシスタント的に入り、実務を通じてノウハウを吸収する。
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報告・連絡・相談を徹底し、ミスを未然に防ぐ。
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英語・財務スキルのブラッシュアップ
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業務しながらTOEICや英会話スクールで英語力を伸ばす。
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常に最新の財務・会計知識をキャッチアップする習慣を身につける。
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社内外の人脈作り
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弁護士、会計士、コンサルタントなど他分野の専門家とのネットワークを広げる。
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社内コミュニケーションも活発に行い、信頼関係を築く。
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セルフマネジメント
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激務になりがちな業界なので、健康管理やストレスマネジメントを大切にする。
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スケジュール管理能力や優先順位付けの力を磨く。
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【追加解説10】グローバルM&A案件での注意点と魅力
最後に、今後ますます拡大が見込まれるグローバル案件についてのポイントを紹介します。
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法務・規制の違い
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国際取引では、現地の会社法や税制、競争法(独占禁止法)など、複雑な規制に対応する必要がある。
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専門家の助言を早期に得ることが重要。
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言語・文化の壁
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ドキュメントは英語が主流。商習慣や文化背景の違いに配慮しないと交渉が進まない。
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通訳や現地スタッフとの連携が欠かせない。
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クロスボーダーPMIの難しさ
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組織風土や人事制度の融合が国内M&A以上に難航する場合が多い。
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文化的・社会的背景への深い理解が必要。
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グローバルキャリアと報酬アップ
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国際案件に通じて経験と人脈を広げると、キャリアの選択肢が大きく広がる。
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外資系企業への転職や国内大手の海外案件担当へステップアップする道も開ける。
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まとめと次のアクション
ここまで、M&A業界の概要から具体的な仕事内容、必要なスキル、転職ルート、キャリアパスに至るまで詳細に解説してきました。未経験者でも適切なスキル学習とエージェント活用、そして継続的な努力によって、M&A業界で活躍するチャンスは十分にあります。
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まずは専門用語や財務・会計の基礎知識をインプットする
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実務で応用できるロジカルシンキングとコミュニケーションスキルを鍛える
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業界に強い転職エージェントを利用し、非公開求人や面接対策のノウハウを得る
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転職後も学習を続け、専門性を高めることでキャリアアップを図る
M&A業界は事業承継や経営統合など、企業の命運を左右する重要な意思決定に関わる非常にやりがいのある仕事です。一方で、高い専門性とタフさが求められるため、最初の一歩を踏み出す前に十分な準備をすることが大切になります。
もし本記事を読んで「もう少し詳しい話を聞いてみたい」「具体的にどんな企業が自分に合うのか知りたい」という方は、ぜひM&A業界に強い転職エージェントへの登録を検討してみてください。あなたのキャリアゴールに合わせた最適な求人紹介やアドバイスを受け取ることで、転職成功率を大幅に高めることができるはずです。
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